精神科医療における深刻な事態の一つに自殺の問題があります。
人は困難な状況に直面した時、苦しい状況から一刻も早く逃れるために「死んでしまいたい」と考えることがあります。独りでは収拾不能な状況に追詰められていく時、「消えてしまいたい」と一気に決着を着けたくなることもあります。困難な状況と性急な判断、理想的な唯一の結果への固執と他者からの援助への拒絶が重なると希死念慮を生じやすくなります。
希死念慮がすぐに自殺に直結するとは限りませんが、衝動コントロールの低下が加わると非常に危険な状態になります。周囲からは些細に見えるような出来事でも、それが最後の引き金となり衝動的に自殺につながってしまう危険が高まります。
不眠や食欲低下、意欲低下や気分の落ち込みなど、うつ病の患者さんには様々な症状が現れ、こうした症状をやわらげるために抗うつ剤や抗不安薬、睡眠導入剤などの薬剤が治療で用いられます。中でも抗うつ剤は副作用が少なく導入し易い薬剤が開発されてきたため、治療初期から積極的に用いられるようになって来ています。しかし、意欲を高める抗うつ剤に衝動コントロールを低下させる側面があることや、睡眠導入剤や抗不安薬の乱用による衝動コントロールの低下や依存が問題となって来ています。
現在、抗うつ剤の多くには、希死念慮をもつような重篤なうつ病患者さんや、衝動コントロールの未熟な18歳未満の患者さんに対する使用に注意を喚起する警告が製薬会社からなされています。
副作用が少なく効果的な薬でも、安易な使用が危険を招く場合があります。薬物療法には、緻密な状態把握と、標的を絞ったピンポイントの適切な使用が大切だと考えています。
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